子供じゃない。
夜中の旅館で、父さんの初めて泣く姿を見た。

母さんが夕食を無理に食べて、履いているからだ。

小声で母さんが言った。

「こども達が起きるわ、こんな姿みせたくないの」って。

「思い出のわたしはいつも笑顔でいたいの、それはあなたにもよ」って。

ぼくは布団に深くもぐり、枕に顔を押し付け、涙声を押し殺した。
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