ジェネシス(創世記)
初代国王ウル

「主にあって私の心は喜び、主にあって私は角を高く上げる(サムエル記、上)」

 サムが亡くなってからも、パレス人は猛威を奮っていた。ラエル人は何度も立ち上がっては戦いに挑んでいたが、やはり彼らには敵わなかった。

 ラエル人が勝利を治めることができない理由の一つに、パレス人のような国王がいないことにある。

「主」の言葉を伝える神官たちや司祭者たちはいても、民たちを勝利に導いてくれる勇気ある者はいなかった。民たちは、国王を求めた。

 ムルという立派な司祭者がいた。ムルは潔癖で温厚な人物ではあったが、二人の息子は極悪非道なチンピラだった。

ムルと神官たちは、だれを国王にするか相談した。ムルは、あまり乗る気ではないようだ。もし国王自身が戒律を破るようであれば、選ぶだけの価値はないと思案したからだ。国王も人の子だ。誘惑に負けたら、何をしでかすか心配だった。

「彼らの上に私が、王として君臨することを退けているのだ(サムエル記、上)」

 神官の一人が、「アカシック・レコード」と接触した。「明日、ムルの前に一人の男が訪ねてくる」という夢のお告げがあった。それは現実となった。

 ウルという青年が、はぐれたロバを捜し求めてムルの家を訪ねて来た。ムルはお告げの通りになったので、驚いた。ウルは、ヤブーの一二番目の息子、ミンの子孫であった。

 ウルは羊飼いの農家に生まれ、しかも末っ子だ。父親や兄姉たちから愛されてはいたが、家督権はない。

自分が、「主」から突然「国王になりなさい」と唐突に命じられても、素直には引き受けられない。けれども、「主」とムルと神官たちが、あえてその「ウル」という青年をラエル人の最初の国王に選んだのだ。

 ムルは、ウルの謙虚さにほれこんだ。ムルと神官たちは、国王になるための教育をウルに施した。

末っ子ゆえにコンプレックス(劣等感)があり、学問に対する意欲は人一倍強かった。神官たちの下で、学力・体力・武術・兵法を身につけるのであった。
 

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