ジェネシス(創世記)
ウルの知性と教養の習得は、「主」から得られるものではない。自分自身との戦いであり、それは努力の賜物であると、信じた。

強い学問への探求心が、知識を数多く深めた。その習得の早さは、神官たちもムルも驚くものがあった。

 戦術も学び、基礎体力をつけ屈強な戦士となった。自分をいつしか、「天才」と名乗るようになってから、謙虚さを失いかけ始めていたようだ。

そのおごり高ぶりが、将来、「主」への裏切り行為になるとはウル自身知るよしもなかった。

「無知を恐れるなかれ、偽りの知識を恐れよ(パスカル)」

「学問のあるバカは、無知なバカよりもさらに愚かである(モリエール)」

「民の声は私に届いたので、私は民を顧みる(サムエル記、上)」

 司祭者ムルは、ウルを国王にするため、頭から「香油」を注ぐ洗礼の儀式を授けた。これでウルは、正式な「国王」となり、民たちから祝福されるのであった。

 一二士族は一致団結し、その時がきたと信じて戦の準備を始めた。一方パレス人は、ウル国王の動きを監視・警戒していた。当然、戦争に備えて士気を高めた。両国に緊張緩和が走った。

 けれども国王とは名ばかりで、ウル国王は今まで通り羊飼いの生活を続けていた。ボロ切れの服をまとい、質素で貧しい日々を送っている。

城を作ることもない、前戦基地の設置もしない。武器の準備もしない。人を集めて、戦いの計画を企てる様子もない。

民たちが、勝手に勘違いして結束を固めているだけなのだ。何一つ、民に指示や命令を下すことはない。
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