ジェネシス(創世記)
北の王国、ラエル

「父がお前たちをムチで懲らしめたのだから、私はサソリで懲らしめる(列王記、上)」

 紀元前九三0年、官僚ヤロブはラエルの国王となった。しかし民たちが崇拝する神殿は、南の国、エルサレムの町、ユダ国にあった。そこへ行かなければ巡礼はできない。

 ヤロブ国王は焦った。このままでは、民たちはラエルの国を離れてしまう。その危険性を恐れたヤロブ国王は、金銀でできた「主」の偶像を作り、神殿を築いた。ヤロブ国王は民たちに、それを崇拝するように強制させた。

 憤慨したある司祭者が、それを壊そうとした。ヤロブ国王は止めようとしたが、手首の関節を外されてしまった。司祭者は空手・武道の心得があるようだ。

ヤロブ国王は、激痛に倒れ、地面の上でのたうちまわった。けれども司祭者は、外した関節を糸も簡単にまた、元に戻した。

司祭者はヤロブ国王に約束させた、二度と偶像を民たちに崇拝させないように、戒律を守るようにと命じた。そう言い残して司祭者は、町から立ち去って行くのであった。

 懲りないヤロブ国王は戒律を破り、すぐに新しい偶像を作った。「主」の怒りは、その罪を直接ヤロブ国王本人にではなく、その後継者たちに向けた。その罪を、死によって報いらせた。

 国王の後継者争いは続いた。特定の国王の子息がいない国にとって、権力・武力をもってそれを民たちに認めさせた。

ヤロブ国王の息子が即位したものの、ヤロブ国王の友人バヤに殺された。バヤの息子は軍隊長のジムに殺されたが、バヤは主君殺しの罪で将軍オムに追われ焼身自殺を遂げてしまった。権力争いの末、将軍オムの息子ハブが王位を継いだ。

 ハブ国王は、パレス人の女性ベルと結婚した。それは同盟国を築くための、政略結婚だった。ベル王妃の提言で、ハブ国王はパレス人が崇拝する神たちの偶像を作っては、神殿をも建設した。

さらに、ハブ国王や国民たちにもパレスの神を信仰するように勧めた。ベル王妃によって、「主」への崇拝がけがされてしまったのだ。


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