ジェネシス(創世記)
私の家族は、こんな薄暗い洞穴の中で生活している。あれから数十年以上もたった。ローマ人はもう私たちのことを、忘れたことであろう。父さんを、いつまでもこんな洞穴の中に閉じ込めておくわけにもいかない。

 私はユダ人であるが、宗派はクリストス教徒だ。私は、イゼスの言葉をパピルスに書き残した。それらの書籍は、膨大な数量となった。どうやって運ぶ。不可能だ。

 時は訪れた。父さんと母さん、私の愛する妻と三人の子供たちを連れて、この洞穴を捨てよう。これらの書籍は、洞穴に残すしか方法がない。東の国へと旅立とう。あの屈強な人たちは、私たち家族を護衛してくれるそうだ。

 父さん、東の国には何があるというのだ。もしかして、その国から新たな「救世主」が出現すると言うのか。遠い未来の話など、私には理解できない。その人を誕生させるために、東の国を目指すのか?

 
< 210 / 375 >

この作品をシェア

pagetop