ジェネシス(創世記)
けれども、妻だけはそんな次女を影ながら支援していた。検査した結果、次女の染色体・遺伝子に若干の「傷」が見つかった。普通人とは違う、傷だ

。次女は、「神経症」なんだと思って接するしかない。この亭主の遺伝子にも、若干の「傷」が見つかった。となると、生まれてくる孫息子の遺伝子は、大丈夫なのだろうか? 心配だ。

 ここは「主」から厳選された、有能な人材の集まりだ。ユダ人の司祭者は、次女を快く迎え入れたが、私は不愉快だ。仲間たちだって、親族を残してここにきているのだ。

次女夫婦だけ、特別扱いはできない。当然、乗船する権利などない。乗船には反対だ。どうやら、心配した妻が、みんなに内緒で呼び寄せたようだ。示しがつかない。

 とは言うものの、こんな次女でも私の「ミトコンドリアDNA」を備えもった実の娘だ。私の生きた証なのだ。私の育て方が悪いのか。

大学では優秀な教授でも、家庭ではダメな父親だった。「失敗学」も、子育てには通用しないようだ。

「父母の えらび給ひし名をすてて この島の院に棲むべくは来ぬ(明石海人)」

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