ジェネシス(創世記)
次女は今、この戦乱の中で子供を出産しようとしている。次女にとっては、待望の子宝だ。

果たして、無事に出産できるのであろうか。方舟の手術室が、砲弾を受けて破壊された。医務室の機器も良好とはいえない。

 他に代用できる部屋といえば、「元馬小屋」がある。清掃して無菌室にした。旅立つ日が近いので、番(夫婦)の動物たちは、「細胞核」を取り出して遺伝子を保管した。馬の肉は、宇宙食として加工処理を施した。「馬刺し」はうまかったなー。

 生まれてもこの先、孫息子に未来はあるのであろうか。「主」よ、こんな愚かな次女でも、見守って下さい。

「子供きて むしる椿の におひけり(前田普羅)」

「露の世は 露の世ながら さりながら(小林一茶)」


●「第十二章 破棄された契約」へと続く。

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