ジェネシス(創世記)
私たちは会議の結果、くじ引きで、地球に残る家族を決めた。私と妻、次女夫婦がくじに当たり火星に行くことになった。

「主」に選ばれていない次女夫婦が当選するとは、納得がいかない。仲間たちは、なぜ司祭者に強く抗議しない。これも、納得がいかない。

 クリストス系下層軍人は、イラク人家族を誘拐し、人質にとってまで「宇宙船を渡せ」と脅迫してきた。

フランス人の司令官は、断固として拒否した。イラム教徒たちは、泣きながらその決断に承諾した。

 脅迫には屈しない。それが私たちの方針であり、信念だ。その結果、人質は首を切断されてしまった。何と卑劣な連中だ。みんな、憎しみに燃え上がった。

 ある日、白旗をなびかせた一台の装甲車が向かってきた。交渉しにきたようだ。方舟を素直に引き渡せば、自由と生命を保証すると確約した。

信じるものか。私たちが降伏を拒否したために、翌日は下層軍人と一戦を構える結果となった。

 しかし、朝がきて昼になった。夜が訪れ、陽が昇った。いつまでたっても、下層軍人は総攻撃を仕掛けてこない。あまりにも静かすぎる。何が起きたのだ。

 後日知ったことだが、深夜、司祭者が医療施設から「天然痘」入りの小箱を取り出した。それを司祭者のペットである「ピイチャン」に、その箱を持たせて、下層軍人の陣営に置いてきたらしい。

 下層軍人は、三日で全滅した。こんな戦法が、あってよいものか。司祭者は、危険だが「研究用の細菌」を今まで極秘で保管していたようだ。これは、違法行為だ。

保管庫が破壊されたら、全員感染死するのだぞ。司祭者は、「主のお告げに従っただけだ」と言い訳をしていた。それでも、科学者か。
 


< 291 / 375 >

この作品をシェア

pagetop