ジェネシス(創世記)
 政府軍はあの丘の上から日夜、私たちの工場を監視し続けている。ある日、対テロリストの特殊部隊が工場に忍び込んできた。一二人の黒装束だ。

お前たちは、コウガ忍者か。船内で銃を使用するな、核融合炉を破壊するつもりか。貴様、私の大切な論文を踏みつけたな。許せん。

「私の図形から、どいてくれないか(アルキメデス)」

 剣を構えたな。面白い、剣道一級の私に刃向かうとは、いい度胸をしている。その構え、その微妙な動き、手・腕・肩・首・刃先・足の位置、何よりもその目が、次の動きを読み取れるのだよ。

動きがお見通しだ、度素人くん。面、篭手(手首と肘の間)、動作が大きすぎる、無駄な動きが多い、スキだらけだ。私に剣を向けるなど、一0年早いぞ。

 おっと、敵に「カンフー」の達人がいた。ここは、朝鮮人の「テコンドー」に任せよう。

 私は、敵の「空気圧縮銃」で壁に叩きつけられた。五メートル四方の空気を、一立方センチメートルに凝縮した弾丸だ。吹き飛ばすだけで、殺傷能力はない。

これで私も、終わりか。どうした、黒装束が床上に倒れた。妊娠中なのに、次女が回し蹴りで倒したようだ。さすが、元ヤンキーだ。ケンカは強い。

 傭兵たちの果敢な抵抗によって、被害は最小限に抑えられた。宿舎が破壊され、全焼した。ただでさえ物資が足りないのに、「爆縮型消炎弾」で消化した。

通称「ブラックホール型消炎弾」。延焼している中心部に、この弾丸を打ち込む。半径一0メートルは窒素ガスによって酸素が遮断される。

四方八方へと一瞬爆発したかと思えば、瞬時にしてその爆風は収縮を始め、炎を鎮火させる。そういう弾丸だ。


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