ジェネシス(創世記)
第十三章 複製される宇宙(完)
第一三章 複製される宇宙 

「天の父の御心を行う者だけが、天の国に入れるのである(マタイによる福音書)」

「前世の宇宙」では、火星に向かった人類は、「父さん」の太陽フレアーによって全滅してしまった。

方舟の乗員は、地球を離脱する前に墜落し爆発してしまった。人類は、二四六七年をもって絶滅した。「アカシック・レコード」の記録は、ここで止まった。

 人類は火星の永久氷塊を溶かし、地表にわずかな海を形成させるだけだった。微生物も増殖しなければ、植物さえも繁殖しなかった。

当然、魚類や動物たちも生存できない。火星に生物が誕生しなかった。私の計画は、失敗した。

「現世の宇宙」では、私の星は四六億年目にして、やっと「生物」で満ちあふれるようになった。

人類がまた、火星に海をもたらしてくれた。しかし人類は、二五二一年をもって絶滅してしまった。私が居住の権利を剥奪したからだ。

それから、数万年がたった。大気圧が上がり、ドライアイスの極冠が溶けた。二酸化炭素によって気温が上昇し、温室効果が得られた。それでも火星は太陽から遠いため、決して温暖な気候とはいえない。

 地球から持ち込まれた細菌や微生物が、活発化した。火星に存在した原始的な細菌も、急速に進化を遂げた。仲良く、共存している。植物が生い茂り、酸素と窒素で大気が形成されるようになった。

淡水だった海が、人工的に作られた塩分の海に変わった。地球から運ばれた魚類も増えた。火星の海でも環境に適応できるようになった。
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