ジェネシス(創世記)
私には、それを確かめに行くだけの体力も気力もない。歳を取り過ぎた。冒険するだけの勇気はない。その巨石建造物のことを人々は、「ピラミッド」と名付けた。

 天空の暗雲は、いつまでも厚く覆っていた。それでも赤道に近いため、太陽からのわずかな熱の恩恵は、ある程度受けていた。

でなければ、この氷河期によって私たちだけではなく、人類は死滅していたかもしれない。時には暗雲から垣間見る、「希望の光」をのぞくことがあった。「主」を信ずる希望がある限り、私たち一族は祝福され続けるであろう。

 島国で死んでいった者たちを弔うためにも、私にできることは「生き抜くこと」しかない。この悲惨な出来事を、後世に語り継ぐ以外にないであろう。子孫の繁栄のためにも、私は、自殺することは許されない。

「自殺するのは、卑怯である(ナポレオン)」

 私たちは、高度な文明を失ってしまった。新たな科学技術を生み出すには、また長い歴史を要する。火星に、行ってみたかった。

子々孫々に、希望を託そう。私の子孫は、これからどんな運命をたどるのであろうか。「主」よ、子孫を守りたまえ。一族を栄えさせたまえ。

「産めよ、増えよ、地に群がり地に増えよ(創世記)」
< 46 / 375 >

この作品をシェア

pagetop