ジェネシス(創世記)
「売春防止法」を男性の神官や司祭者たちは成立させようと試みたが、売春婦たちの反対によって法案は見送られた。不愉快な話だ。

女性の尊厳の機会を、女性たち自身で奪ってしまった。嘆かわしい。同じ女性として、恥ずかしい限りだ。名誉より、自分の家庭や生活のほうが大事か。

 私たち女性は、神官や司祭者たちに、女性にも「教育を受ける権利」を主張したが、全て却下された。

議会政治が発達し、国会議員の選挙も始まった。選挙権も被選挙権も、男性だけにあって女性には無かった。差別もはなはだしい。

 生き残っていたパレス人はまだ、ラエルの土地をねらっている。男性たちが戦に出掛けている間、ケインの町は別動隊に奇襲攻撃を受けて壊滅する危険が何度もあった。

木造の図書館に保管していた、大切なパピルスの書籍も、全て焼き払われてしまった。また大切な文書を失ってしまった。

新たに、書き残さなければならない。それを文書にして書き続けるのは、男性の仕事だ。女性ではない、文字が書けないからだ。

 母親たちは、子供達に口承だけで、歴史を伝承していた。もし、読み書き算盤の文才が女性にも備わっていたら、パピルスに書き綴って聖書を書き記していたはずだ。

 男性たちにとって、最も敬う存在は「主」かもしれないが、女性たちが敬う相手は、「主人、亭主」なのだ。

私たち女性は「主」と「主人」に従う者、つまり「僕」なのだ。老いては「息子」にも従う。時に亭主たちは、妻のことを「家政婦」とも呼んだ。

「主婦と家政婦」、どこに違いがある。「妻」に性的交渉と出産能力がなければ、ただの「家政婦か寄生虫」だと亭主たちは、そうののしっている。私は「ふざけるな」と叫びたい。
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