ジェネシス(創世記)
一つだけ確実に誇れることは、ラエルの女性たちだけが、正統な血を引く民族であることだ。男性は、生後八日目に割礼を施さなければ、ラエル人とは看做されない。

「主」から祝福を受けられない。女性は、子孫の繁殖を司るだけの生き物でしかないのであろうか。

 国会では寺子屋を廃止して、小学校を設立した。さらに中学校、高等学校、そして「ラエル大学」まで開校した。私の孫娘は教育改革を叫んだ。

女性にも「就学の権利」を認めさせた。私の孫娘は、ラエル大学の法学部の学生として学んでいる。将来は、「国会議員」として女性のために貢献するぞ、と野心を燃やした。

「女性の女性による、女性のための政治は、地上から滅びることはないであろう」

 孫娘は、女性の人権と尊厳を獲得するために、男性社会と戦うつもりのようだ。孫娘が代議士として活躍するころには、私はもう他界している。孫娘の成長を、見守りたいものだ。できる限りの応援をしよう。

「主に私たちは仕え、その声に聞き従います(ヨシュア記)」

「水くみ場で、水を分ける者らの声にのせて、主の救いを語り告げよ(士師記)」

「光あれ」

陣痛が始まった。女性の胎盤とつながり、子宮を通ってきた赤子は、その直前で明るい世界を見いだした。新しい命が、誕生した。その女性の名は、「ディーラ」。

 その後、ラエル人から多くの「士師(民衆の指導者)」が輩出されることになる。忍の頭オン。野盗エフとその娘。怪力サムと盲導犬ピイチャン。そして初代国王ウルが、誕生する。
 
●「第五章 英雄たち」に続く。
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