蝶々結び
「どうした?今日の主役が浮かない顔して」


いつの間にか後ろに立っていた上杉先生が、ビールの入ったグラスを片手に隣に座った。


「いえ……。別に……」


「何かあるなら言ってみろ」


上杉先生は、あたしの頭をポンポンと叩いた。


「あ、あたし……」


「うん?」


話すつもりなんて無かったのに、穏やかな表情を見せた上杉先生に促されるように話を始めてしまった。


「ずっと嫌だったんです……。星の舞を踊る事……」


先生に言ってどうするの……?


内心ではそう思っているのに、口が止まらない。


「お祭りの日に生まれたからって、小学生の時からずっと踊って来て……。最初は良かったけど、最近はプレッシャーを感じたりして……」


上杉先生ならちゃんと話を聞いてくれるような気がしたからこそ、あたしは先生に縋ったのかもしれない。


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