蝶々結び
「恋愛ってさ、難しいよな!」


創太は明るい声で言ってから、わざとらしくニッと笑った。


「うん……」


その笑顔を見て、あたしからも自然と笑みが零れた。


「悩んだり、戸惑ったり……」


「うん……」


「あ〜ぁ!七星のそんな気持ちが俺に向いてたら、めっちゃ嬉しかってんけどな♪」


創太にとっては、冗談のつもりだったのかもしれない。


だけど…


創太の優しい笑顔が、あたしの胸の奥を締め付ける。


「ごめっ……!」


「アホか!泣きそうな顔すんなっちゅーねん!俺はまだ諦めてへんからな!」


創太はそう言って、あたしの頭を優しく撫でた。


彼の手から伝わる熱が、あたしの心にスッと染み込んで来たような気がした。


「うん……」


あたしは、今にも零れ落ちそうな涙をグッと堪えていた。


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