蝶々結び
「あっ、すみません!」


少しだけ不機嫌になった事が伝わったらしくて、白田君は慌てて謝った。


「別にイイけど……」


「お詫びに、今度何か奢らせて下さい!」


「えっ?イイよ!」


慌てて首を横に振ると、白田君が真剣な表情になった。


「いえ、奢ります!」


「別に、そんな大袈裟な話じゃないんだから……」


あたしは戸惑いながらも、両手をブンブンと振る。


「七星さん!」


「はい!」


いきなり下の名前で呼ばれた事に驚いて、咄嗟に返事をしてしまった。


でも、さっきもそう呼ばれてた気が……


記憶の糸を手繰る前に、白田君が口を開いた。


「俺、これから“七星さん”って呼びますから!後、奢りは決定っス♪イイっスよね?」


彼の強引さに負けて、思わず頷いてしまっていた。


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