蝶々結び
上杉先生はゆっくりと体を離すと、意地悪な笑みを浮かべた。


「はい、キスして♪」


「へっ!?」


「言っただろ?罰ゲーム♪」


罰ゲームって、さっきのやつじゃなかったんだ……


「七星」


「はい……」


戸惑いながらも見つめた上杉先生の笑顔が眩しくて、頭がクラクラする。


「だって……皆が見てます……」


「誰も見てねぇよ。だから気にするな」


小さく呟くと、上杉先生は楽しそうに否定した。


あたしは、優しい波の音に背中を押されるようにゆっくりと背伸びをして、先生にそっと顔を近付けた。


後、5センチ……


あたし達は、潮風に包まれながら甘いキスをした。


夕陽に照らされている先生が、どうか幻でありませんように……


あたしはきっと、この瞬間をずっと忘れない――。


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