蝶々結び
どうして謝るの……?


そう訊きたいのに、上手く言葉が出て来ない。


携帯を強く握り締め、上杉先生の言葉を待った。


「ちゃんと守ってやれなくて、ごめん……」


先生にそう言われて、やっと意味がわかった。


上杉先生は、あたしとの事をあの場で認めた事に責任を感じているんだ…。


もしかしたら、言い逃れも出来たかもしれないと思っているのかもしれない。


「謝らないで……」


少しだけホッとしたあたしは、自然とそう言っていた。


「あたしはずっと、先生との事を皆に言い触らしたいくらいだったから……。喜んじゃいけないんだけど、嬉しかったんだ……」


「七星……」


「だから気にしないで!あたしは大丈夫!」


自分からこんな言葉が出て来るなんて思ってもみなかったけど、これがあたしの本心だった。


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