蝶々結び
「そろそろ行かなきゃ……」


時計を確認してから、小さく呟いた。


「あぁ。俺は後で行くよ」


「うん、じゃあ……」


寂しさを隠して笑顔を見せ、上杉先生に手を振ってから踵を返したけど…


「七星……」


すぐに名前を呼ばれて、パッと振り返った。


「どうしたの……?」


あたしが小首を傾げると、上杉先生は笑顔で口を開いた。


「ツライ思いすると思うけど、絶対に負けんな!」


「うん」


笑顔で頷くと、上杉先生が柔らかく微笑んだ。


「七星!」


それから、先生は優しい声であたしを呼んで、満面に笑みを浮かべた。


「俺はお前が好きだ!」


「あたしも先生が好きだよ!」


あたし達は、クスクスと笑い合った。


程なくして上杉先生にもう一度手を振って、教室に向かった。


< 401 / 494 >

この作品をシェア

pagetop