蝶々結び
ずるいよ、先生……


勝手にいなくなるなんて……


あたしは、先生以外の人との恋愛経験なんていらない……


そんな恋、知りたくもない……


手を繋ぐのも、デートをするのも、先生じゃなきゃ意味がないのに……


先生なら、きっとそれくらいわかってくれてたよね……?


「せん……せぇ……っ!」


どこにも行かないで……


あたしを一人にしないで……


先生がいてくれないと、どんなに努力してもイイ女にだってなれない…


こんなにも愛おしくて愛おしくて、どうしようもないのに……


もう、一緒にはいられないの……?


「せんっ、せぇ……」


あたしは子供で…。


ただ、泣く事しか出来なくて…。


上杉先生の傷に、気付いてあげられなかった。


あたしと先生に残されたのは、深い愛の傷跡だけだった。


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