カミヒコウキ、トオクマデ。
「あっれー、華ちゃんが居ながら佐奈ちゃんにまで」
この場にはあわない陽気な声が響く。夏だ。
海も目を見開いている。
「てか次体育よ、オレ代表で海呼びにきたのよ」
そういえば、次、体育だ。
ジャージに着替えなきゃ。
頭の中は泣きながらも
とても冷静。
涙を堪えようとしたけど
目からポロポロ零れる。
「海、ジャージ着替えなきゃだよ」
よく見ると、夏はジャージ姿。私もジャージ着替えなきゃ。
体育なんてできなさそうだ。
今も涙は流れ続けているし。
「ほら、着替えてこいよ」
「いや、佐奈子と話が」
「話できなさそーだよ」
「それはっ」
「いいからっ」
「よくねぇーよ」
夏はあからさまにため息をついて、私の手首を掴んだ。そして、私の手を引いて歩きはじめる。「夏紀っ」と海の声がする。それでも夏は振り向かなかった。海もおいかけてこなかった。