ぼくの太陽 きみの星
家の階段を上がるそのときまで。

鷹耶があたしを置いてどこかへ行ってしまったなんて、どこか信じてない自分がいた。

あたしを家に帰すための方便じゃないかなんて、ひとすじの希望にしがみついてた。



あたしの部屋の向かいで、大きく開かれていた鷹耶の部屋の扉。


何ひとつない、がらんどうの部屋。

誰かがここに住んでいた痕跡すらない、からっぽの部屋が、虚しくぽっかりと口を開けていた。



(鷹耶――)



あたしは感情にまかせて家を出てしまった。

この家は、ひとり残された鷹耶には恐ろしい針のむしろだったに違いない。



あたしが飛び出したせいで、ひとりで全部背負わせてしまった。



(ごめん、ごめんね、鷹耶――)





足元の地面がぐらぐら揺れる。





世界が崩れていく――
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