ネコ専務シリーズ2
ネコ専務に飼われているシロは、シン
イチのその言葉にちょっと鼻白み、

「それはあたしには辛い言葉ね」

とだけ言う。シンイチははっと気づいた
ように、

「ああ、別にシロさんがどうとかいう
 ことじゃないんだよ」

と言ってくれたが、シロはそれから
夜明けまで、シンイチとおしゃべりを
しながらも、心は半ばここに在らず、

自分でも意外なほどシンイチの言葉に
動揺させられて、自分も完全な自由を
求めたいという気持ちがかつてなく
膨れ上がっていたのだった。

(2本足の家に飼われているシロ、じゃ
 なくて、この世界を自由自在に闊歩
 するシロ、になったら?

 安楽さを取って自由を捨てたあたしは、
 猫の道に反しているんじゃないの
 かしら?)


ぼんやりとそういう考えに気を取られ
ながらも、シンイチとぽつりぽつり、
Nオケのこれからのことを話し合っていた
シロだったが、

寝室の方でネコ専務が「ふああああああ」
と大あくびをした声を耳にして、はっと
なった。夜はとっくに明け、明るい光が
部屋に差し込んでいる。




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