%コード・イエロー%
病院から目と鼻の距離に、そのぼろぼろのアパートは時の流れから忘れ去られたように建っていた。
整備された綺麗なマンションや住宅街の合間を縫って、枯れ草に囲まれたその建物は静かにそこにある。
平日の昼間ということもあってだろうか。
一本通りをでれば、大勢の人や車が行きかっているのに、やけに静かだ。
その一階の端にある部屋は、日当たりもいまいちで見るからに居心地の悪そうな場所にある。
表札の出ていないその部屋の前で、亮雅は迷うことなく立ち止まった。
チャイムもついていないらしい叩いたら壊れてしまいそうな扉を、
亮雅がコンコンと軽くノックする。
中にいる人間が歩いてくる気配までが感じられ、壁の薄さを主張している。
鍵を開ける音の後に、開いた扉から疲れた顔をした白髪の男が顔を出した。
「よく来たね。入りなさい」
「海東先生・・・」
なんと言っていいかわからず、私はしばらく彼の顔を無遠慮に眺めた。
私があの病院の中でもっとも信頼し、尊敬していた医師。
「あがれよ」
亮雅の声で、私はぎこちなく靴を脱いだ。