准教授 高野先生の結婚

F女学院の礼拝堂で挙式するには、いくつかの条件や規則がある。

条件は新郎新婦のうちどちらかが卒業生か教職員であること。

そして、規則としては挙式を希望する者は事前に牧師と面談をすること。

挙式内容についてはアドバイザーに相談をすることなどが定められている。

ちなみに、アドバイザーはウエディングプランナーをしているOGの方だという。


アドバイザーさんは、約束の時刻になる少し前に現れた。


「はじめまして。アドバイザーをさせていただいている久遠(くおん)と申します」


珍しい名字だなぁと思いつつ、いただいた名刺を見てさらにびっくり!


「あ、驚かれました?おあつらえ向きの名前でしょ?“久遠 結”だなんて」

「なんかすっごい縁起よさそうデス!」

「実は旧姓なんですよ、これ。もったいないので仕事上は旧姓のままで」

「なるほどー」


確かに、ブライダルのお仕事をするならインパクト大のお名前だもの。

“いつまでも結ぶ・結ばれる”なんて。


「今は“伊藤”なんですよ、本当は」


そうして久遠さんは“普通でしょ?”と茶目っけたっぷりの笑顔を見せた。
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