准教授 高野先生の結婚

彼はいつだって、気取らず、気負わず、気張らずに、さらっとすごいことを言う。

「僕はちゃんと知っているから」

「え?」

「君は、僕だけの君でいてくれるって」

飄々と、淡々と、粛々と……そんな言葉が彼にはとても似合うと思う。

やっぱり彼は思慮深い大人の男の人なのだ。

粋がらず、相手のことをみだりに所有したがらない。

彼は決して私のことを“おまえは俺の女だ”なんて誇示も断定もしたりしない。

ただ、彼は心から望み願ってくれる。

“僕だけの君でいて欲しい”と……。

そして、同じように彼を想い望む私を揺らぐことなく信じてくれる。


「なんか僕、どさくさにまぎれて恥ずかしい台詞言っちゃってるよね」

どさくさって……まあ確かに“どさくさ”と言えばそうかもだけど。

「そんなこと、言っちゃってるかもね」

「そんなぁ、フォロー無し?」

困った顔で情けなさげに笑う彼が可愛くって愛おしい。

だからこそ、可愛さあまって意地悪したくなってしまう。

「申し訳ございません。生憎フォローは出払っておりまして」

「詩織ちゃん……フォローって何者??」

「じゃあ、フォローは完売いたしました」

「“じゃあ”って……今度は売り物?」

「まあまあまあ、いいじゃないですか」

「気になるなぁ」

こんな奇妙なやりとりで楽しく笑い合えるのは、他ならぬ彼とだからに違いない。

< 28 / 339 >

この作品をシェア

pagetop