准教授 高野先生の結婚

賑やかな時間は瞬く間に過ぎていく。

時計を見れば、ぼちぼち夕食の準備を始めなければならない時刻。

そして、それは私がそろそろお暇(いとま)をする時刻。

「シオリ殿、まま、もそっとゆるりと」

「しーちゃん、泊まっていけばいいのに」

帰り支度する私を望クンと光ちゃんが引き止める。

その気持ちはすごく嬉しいけれど……。

「ごめんね、ありがとう。でも今日はまだこれからご用事があるから行かないと」

「えーっ!ご用事ってなあに?」

「えと、それはね……」

私が返答に困っていると――

「あれ???ヒロユキの服がちがーう!」

「あっ、寛行さん」

ちょうどそこへ着替えを済ませた寛行さんがやってきた。

「お待たせ。じゃあ、そろそろ出ようか」

「うん」

「光も望もまた今度な。今日はこれから二人で詩織ちゃんちに行かなきゃなんだ」

ご用事というのは他でもない、寛行さんが私の両親に会うご用事。

何を隠そう無謀にも私たちは怒涛の弾丸ツアーを敢行中なのだ。

今日一日でお互いの両親への挨拶(お願い?)を済ませてしまおうという……。

まあ、なんというか――

慌てて日程調整したせいもあるけど、勢いにのって一気に!という気持ちもあり……。

結婚って基本的には計画性と持久力が重要だけど、時として瞬発力も必要らしい。

< 91 / 339 >

この作品をシェア

pagetop