Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
そんな人達を横目に、真夏のうだる暑さの中で文字どおり全身全霊を駆ける人達。


「亜季!!姿勢崩すんじゃねぇ!!」

陸上競技、女子1000メートル種目期待の星。

亜季のシーズン中の練習は過酷を優に越えている。

総体に向け「必死に」練習を積んでいるはずの生徒達が思わず立ち止まり、眉をひそめる。

それは称賛と自らの怠慢との葛藤を呼ぶ。

「自分は頑張ったって上には行けない。」そう考え歩みを止める者。

「自分の努力なんてまだまだだった。」そう考え歩調を早くする者。


誰しもが必死に生きているのに、他人と比べるだけで、その必死すら疑いたくなる。

競技事には付き物なこの葛藤も、夢に駆ける人達にとっては大きすぎる壁と言っても良いもので。

でもそれを越えた者だけがそれを手にするんだ。


だから――――




「みんな頑張れ。」


そう言いながら私はミサンガを作っていた。

亜季が全国大会で悔いの残らない様に。

優斗が皆を関東大会へ連れていってくれます様に。

それにもう一本。




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