Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜
ゆっくりと優斗の顔が離れて、なんだか急に思い出したみたいに私の心臓がバクバクと鳴り始める。
「……えっ、なんで優斗?」
暴れてる心臓をどうにか宥めようと私は胸に手をおく。
にこやかな表情から一転、急に優斗が真面目な顔をする。
そして
「僕、琴音のことが好きなんだ。絶対に幸せにするから付き合って欲しい。」
突然の告白は理解することができなくて。
初めてきいた言葉の様にスッと頭の隅へと流れていって、でも決して消えてはくれないみたいだ。
「えっ、だって。そんなこと急に……それに私は。」
ぽんと私の頬を優しく触る優斗。
表情もいつの間にか、いつもの笑顔に戻っていた。
「琴音何を言ってるのか全然分かんないよ。返事は落ち着いてからで良いから。じゃあね、そろそろ部活に戻んなきゃ。」
振り返りざまに手を振って優斗は保健室から出ていった。
赤く染まる部屋の中で、私は保健の先生が来るまでの間ずっと、その場に立ち尽くしていたんだ。