しずめの遭難日記

今日から日記をつけてみる

―1998年4月27日―
 突然だが、私、新野 しずめは、今日から日記をつけてみようと思う。
 今日が母の命日であるということと、そんな母の口癖が、
「しずめは、何かやり遂げるという事をしなさい」
 と、言われたのを思い出したからだ。
 これまでにも、何度か日記に挑戦した事があったが、どうも、長続きしなかった。けれど、今回こそ、日記を書き続けるのだ!
 まぁ、しかし、今日は時間も遅いことだし、寝る事にする。明日は学校で身体測定がある。
 嫌だなぁ………。

 日記の書き出しはそこから始まっていた。女の子らしい可愛い字体で書かれた日記を見て、野上の口元が少し緩んだ。

 ―4月28日―
今日は、私の人生に置いて最悪の一日だった。
 今日、学校が終わったら、正門の所まで父が車で迎えに来ていた。
 父は、珍しくスーツを着込み、いつも寝癖が直っていない髪型も、今日はワックスをかけてバッチリ決まっていた。私を迎えにきた父は、制服のまま私をあるホテルのレストランへ連れて行った。
「…しずめ。紹介しよう。こちら、浦河さん。浦河 神楽さんだ」
 そう言って父が紹介してくれた女性は、赤い口紅に、ビシッと決まったスーツを着込んだ、いかにも『キャリアウーマン』といった感じの、派手な女だった。
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