【天使の片翼】
・・この、くそ女め。
心の声などおくびにも出さず、ソードはいつものように、ファラに近づき、
彼女の手を取って、甲に口付けを落とした。
「何度も言っておりますが、ここは、女性の来る場所ではございませんよ。
私に声援を送っていただけるのは嬉しいのですが、
女性は、おしとやかに、縫い物などされてはいかがですか?」
こんなやんわりした口調では、ファラにまるで効果がないとわかってはいても、
こう大勢の見物人の前で、怒鳴り散らすわけにもいかず、
ソードは、日々溜めたいらいらを、笑顔にかえて、ファラを見上げた。
「本当ね。見ているだけだと、まったくつまらないわ。
早く、あなたと手合わせしたいものよね。
でも、こんなにたくさんの人前で、私に負けたら、かっこうがつかないでしょうし」
この数週間で、嫌味の腕前を格段に上げたファラが、やはり笑顔で応戦する。
・・ふんだ。
私を無視しようたって、そうはいかないんだから。