【天使の片翼】

澄み切った青空の下、緑の森を、10人ほどの隊列が、ゆっくりと南下していく。


そのほとんどが、馬に乗った、いかつい男たちで、

腰に剣を差していることから、兵士だろうと推測される。

山賊や無法者でないことは、その身なりと、一糸乱れぬ行軍の様子からも明らかだ。


その隊列の真ん中には、4頭立ての馬車が、やはり足並みをそろえて、優雅に進んでいく。


街道を通る商人たちは、兵士の一人が掲げている旗から、

この一行が、カナン国の王族の関係者なのだろうと察し、次々に道を譲った。


そういえば、何番目だかの姫君が、隣国に輿入れすると、もっぱらの噂だ。

さぞや、おしとやかで、美しい女性が、乗っているに違いない。


カナン国の王妃は、聡明で美しいと、国を超えて噂が広がるほどの方だ。

その娘なのだから、きっと、王女も、すばらしくできた姫君なのだろう。


そんな姫君を、一度は垣間見てみたいものだ。


隊商が通るたびに、皆、なんとか馬車の中を覗けないものかと、

せいいっぱい首を伸ばして、視線をめぐらせた。


と。



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