【天使の片翼】

「だめ~!!

もう、我慢できない!!

お願い!止めて~!!」


突然、甲高い、悲鳴のような叫び声が、馬車の中から響いた。


その声に、驚いた御者が、慌てて馬をあやつると、馬は、ブルルッ、と声を出して、その場にとまる。


はぁ~、とため息をついて、馬車の戸口にやってきた少年は、

形だけの、おうかがいをたてた。


「どうかなさいましたか?ファラ様」


返ってくる答えなど、百も承知であったが。


「もう嫌よ!

ここから出して!馬車じゃなくて、馬がいい!!」


馬車から降りざまに、吐き出すように口にする。


陽の下にさらされたファラの銀髪は、きらきらと反射して、少年は、目を細めた。

まるで、宝石をちりばめたような、美しさだ。




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