【天使の片翼】
窓の外に目をやると、斜めに差し込んでくる日差しがまぶしい。
傾き始めたと思ったら、あっという間に沈んでいくようだ。
男の子ならね、と、ファラは小さくつぶやいた。
「男の子なら、もっと父様の役に立てるから。
女の子はね、結婚したら家を出ていくでしょ?
カナン国は、ホウト国に比べて女性の自由はきくほうだと思うけど、
それでもやっぱり、政事は男性のものだから。
どんなに剣が得意だっていっても、私、ちゃんとわかってるわ。
男性には勝てないってこと。だって、私は、女だもん」
ファラは、泣いてはいなかったが、ソードは、そこに涙を見たような気がした。
「もしかして・・・」
「え?」
「いや、なんでもない」
もしかして、自分と結婚しようとするのは、父親のためなのか。
もともとわかっていたことなのに、ソードは政略結婚という事実を認めるのが怖くなった。
なぜかは、わからないけれど。