【天使の片翼】
・・本当に、わかっているのかなぁ。
エリシオンは、ファラの足元を見た。
見事な素足だ。
「わかっているなら、いいけどね」
ルビドの生誕を祝う式典は、1週間ほど続き、
その間、カルレインの名代として参じたエリシオンは、多くの催しに出席して、多忙な日々を過ごしていた。
ファラも、はなやかな衣に着替えさせられ、あちこちで各国の招待客に紹介されては、
にこやかに笑顔を振りまく仕事をしていた。
昨日、やっとその祝典が終わりを迎え、エリシオンは明日カナンへと帰国する。
その合間を縫うように、二人は席に着いたのだった。
「それで、母様の具合はどうなの?」
一転、ファラは緊張した声で尋ねる。
「そんなに心配しなくても、大丈夫だよ。
倒れたときが、ちょうどカナンを出る直前だったから、私が父上の変わりに来たけれど、
もし一日早く倒れていたら、きっと父上がここに来ていたよ」