【天使の片翼】

晴れ渡った空とは対照的に曇った顔をして、ファラが、うん、とあいまいに答えた。


「具合でもお悪いのですか?」


ホウトへ到着して以来世話をしているレリーも、ファラのこんな顔を見るのは初めてだ。


そうじゃないんだけど、とファラは机に顔を突っ伏した。


「どうした?」


小さく体をかがめるソラン。

心配そうに見つめるレリー。


体は机に伏せたまま顔だけを横向けて、二人を眺めた。


近づいたソランが、正面から自分を見つめる。

なんだかとても久しぶりに会ったような気がして、ファラは心が緩んだ。


この国に来てから、最初の1週間はべったりとくっついていたソランも、

ここしばらくは、たまに顔を合わせるくらいだ。


何をしているのかと聞いても、ちょっと、とごまかして答えない。



・・ソランも、そろそろカナンへ帰っちゃうのかもしれない。



だから自分を一人にしているのだろう。

いずれ、ソードに嫁げば、ソランは故郷へと戻っていくのだ。


--自分を置いて。






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