【天使の片翼】
ハハハハ、とソランは、声を上げて笑った。
「もうっ!」
「じゃあ、また後でな」
優しい瞳を残したまま、ソランは部屋を出て行く。
「どこ行くの?」
「よだれで濡れたまんまの衣じゃ、出歩けないだろ?」
指摘されたそこには、自分が流した大量の涙の跡。
汗をかいたにしても、異常なほどの濡れ具合だ。
「ご、ごめん!
けど、それはよだれじゃないからっ!」
「よだれだろ?」
「ち、違うもん!」
よだれだ、と言いながら去っていくソランの背中は、立派な男のものだ。
自分が気にしないように、わざと茶化すソランの思いやりが、
じんわりと心に染み入ってくる。
・・ありがとう、ソラン。
自分などよりはるかに大人であるソランに、ファラは静かに頭を下げた。