【天使の片翼】
わかりました、と言いながら、レリーはその場を去ろうと駆け出す。
はやくこの場から消えてしまいたい。
しかし、数十歩進んだところで、そっとシドを振り返った。
シドはいまだ、木の幹にもたれかかってこちらを眺めている。
「シド様がソード様に仕えるようになってから、
ソード様は、お変わりになってしまいました」
言い逃げではあったが、レリーはそう言葉を残して、一目散に去っていった。
一瞬驚いたように目を見張ったシドは、眉尻を下げて冷笑する。
・・賢い娘だな。
もともと、心を閉ざしていたソードだが、その実、その正体は愛に飢えたただの子供だ。
その心の隙間にどうやればうまく入り込めるか、シドは良く分かっていた。
あれは、分身なのだ。自分と瓜二つの心を持った、そうまるで双子のような。
ただ一つ違うことといえば、ソードは支配者で、自分は服従者であることだけ。
光と影。