【天使の片翼】

ほんのわずか、扉を開く。

と同時に、その隙間から今まで感じたことのないほどの冷気が、ファラを襲った。


風があるわけでもないのに、その見えない敵は一斉に部屋へと侵入する。

一気に下がった室温は、ファラの体から熱を奪おうと、追いはぎのように迫ってきた。



・・寒い!何これ。



暑さにも寒さにも、慣れたと思っていたが、それはファラの知っている寒さとは、

まったく別次元のものだった。


急いで扉を閉めるが、冷たくなった体に痺れを感じる。

寒いというより、痛いような感覚だ。


手近にあった毛布を肩にかけて、何とかしのぐ。

気づけば、歯の合わさる音が、ガチガチと鳴り響いた。


ファラは恐怖と嫌悪感で、胃を押さえた。

いつかどこかで、これと同じようなおもいをしたような気がする。


死の恐怖。


なぜだかそんな気がして、ファラの体が総毛だった。


その時、控えめに扉を叩く音がして、ファラは入り口に目をやった。




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