【天使の片翼】

「・・様。ファラ様?」


レリーの声が、ファラの思考をさえぎる。

手に持っていた椀は、何とか落とさずにすんだ。


「大丈夫ですか?なんだかお顔の色が真っ青ですよ」


「なんでもないわ。大丈夫よ」


言葉をつむぐのさえ、自分の口ではないようで。

感覚が、鈍い。


気持ちを落ち着けようと、ファラは、残りのお茶を全て喉に流し込んだ。

さっきまで熱かったお茶は、すっかり冷えきっていて、

飲み終わりは、ひどく苦い味がした。


と、目の前の視界がぼやけて、ファラは両目をこすった。

どうも、頭がすっきりしない。



・・な、に?



ぐらりと揺れる視界の中で、ファラが最後に見たのは、

心配そうに自分を覗き込む、レリーの大きな瞳だった。




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