【天使の片翼】

白く、可憐な花。

女性物の衣の裾を一周するように、小さな刺繍が施されている。

その衣が似合う者といえば。


「ファラがご心配ですか?」


一拍の、間。

重い、沈黙。


「王がわざわざ出かけられるということは、ひょっとして」


戦になるのでは、という言葉をリリティスは続ける気にはなれなかった。

言葉にすれば、それが現実のものとなりそうで。


それは、エリシオンも危惧していることではあったが。


「心配は要りませんよ。

父上が自ら行かれたのは、ファラを心配してのことです。

嫁になどと言いながら、やはり惜しくなったのですよ。

賭けてもいい。父上は、絶対に婿を取りますよ。

ファラを他国になど嫁がせる訳がない」


少しでもリリティスを安心させようと、おどけてみせた。


「そうね。私も、そう思うわ」


暗黙の了解で、お互いにそれ以上不安を口にする事を避けた。





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