【天使の片翼】

「木の上で?」


なんだかソードの心象に合わない。

なんというか、彼はそういう野生児的なものから最も遠いところにいる気がする。

部屋の前のカリプタスをわざわざ切り倒すほど、木が嫌いなのだと思っていたが。


「はい。なんでも、枝がうまい具合に生えていてちょうど良い影のできる木だそうで」


「ふ~ん、そうなんだ」


「失礼いたします。急いでおりますので」


ぺこりと小さな頭が下がったかと思うと、見る間に背中が小さくなっていった。

手触りのよさそうなまっすぐな髪が、レリーの背中でさらさらと揺れている。



・・レリーもソードとうまくいってるみたいね。



レリーが生き生きと仕事をしているのを見るたび、ファラはそれが自分のことのように幸せな気分になった。



・・いやだ、私ったら。レリー“も”だなんて。何考えてんの!



思わず顔が熱くなって、両手で頬を押さえた。


「なにしてるんだ?こんなところで」


赤面の原因である男の声に、ファラの体がびくりと振動した。



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