【天使の片翼】

強い日差しが薄布を通して、飾られた花の形に、影をかたどる。


本当に、なんて白い肌なのでしょう、などといいながら、

何人もの侍女たちが、ファラの体に衣をあて、髪を梳いていた。


ファラがホウトに来てから、すでに7日。


毎朝恒例行事のように、ファラの姿が、腕自慢の侍女の手によって、美しく着飾られる。


自分で出来るから、と、何度言っても、だめだ。

カナンでは、できることは全て自分でやるようにしつけられた。


着ることも、食べることも、

時には、身を守ることも。


しかし、ここでは、そうはいかないらしい。

“本物の”お姫様のような、下にも置かぬ扱いを受けている。


もちろん、理由は、第九王子の花嫁候補だから、なのだが。



・・あの腹黒王子、ちっとも私と仲良くする気がないのよね。



最初に挨拶を交わして以来、ただの一度も顔を合わせていない。





< 68 / 477 >

この作品をシェア

pagetop