飛べないカラスたち
*






「―――削除完了。」



ピ――――――ッ。


頭蓋に、嫌に高い電子音が響く。


命が止まるその音を不愉快そうな顔をして黙殺すれば、少年はナイフをズボンのポケットへと押し込むと、黒の皮手袋を外した。


真夜中の裏路地には似合わない、その眩しすぎる光色のショートの髪は、少年の両親が好んで選んだ少し高価(たか)い遺伝子。


165cm。16歳。蒼眼。


黒いジャケットに黒いパンツ。中には白いパーカーを着込んでいて、首にはベルトチョーカー腕には太いチェーンのブレスレットをつけている。


真夜中に出歩いていれば一発で補導を受けそうな出で立ちの彼だが、特に辺りを気にした様子は無く、裏路地から出てくるとまっすぐ駅に向かって歩いていった。


街を歩く大人たちも、彼を特に気にする様子も無い。


彼に関心を抱くのは風俗店の男。ただその一人だけだった。



「君!家出したのかい?うちの店なら可愛い女の子いっぱいだから朝まで楽しく過ご―――」



言いかけて、男は少年の鋭い視線に思わず言いかけた言葉を飲み込んだ。


幼さの残るその顔に、似つかわしくない酷く冷たい視線。


それこそまさに、少年が先ほどポケットへ戻したナイフのように、触れるもの全てに傷を与える、そんな印象だった。


少年の目に怯んだ男は一歩後退する。


少年はそれ以上は何をすることも無く、また黙殺を決め込んで駅へと向かって、その黒いジャケットのポケットに手を突っ込んだ。





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