飛べないカラスたち
*




昔、それこそ、今を生きる人間は誰一人としてその時間を生きていない時代に、ローラーブレードという子供向けの玩具が流行った。


それは丸いコマが4つほど縦に付いた靴で、それを履いて少し足を動かすと、地面を滑っていくという玩具だ。


後に、普通のシューズの中にコマが1つ踵部分に内蔵されている靴というのも流行ったらしいが、認知度はローラーブレードのほうが遥かに高い。


数百年の年月を経て、改良に改良を重ね、作り上げられたローラーブレードは名前を『バイクシューズ』とし、形は過去のローラーブレードと似ており、コマが縦に4つ付いているが、さらにモーターが付き、内蔵されたセンサーによって数メートル先の情報を探知し事故を回避、そしてちょっとした体重移動だけで自由自在に動くことが出来、あまり力を使わずとも自転車やバイク並みの速さが出せるようになった。


重さも軽減されたその靴は、運動靴のように軽く、それはもう玩具の域を超えた立派な乗り物だった。


ジャックドーの脚には、いつもそれが付けられている。


初めて履いたのは、両親が最後に贈ってくれたプレゼントで、14歳のとき。


あの時の靴はもう潰れてしまったが、この靴を履いていることは唯一、自分と両親を繋ぎとめてくれる架け橋のような気がしていたのである。






< 24 / 171 >

この作品をシェア

pagetop