焦れ恋オフィス
「貧血も気になるけど。赤ちゃんのお父さんには妊娠の事を言ったの?」
「いえ、言ってません」
突然の質問が、更に私の緊張を深める。
夏基には、言えない。
別れた彼女に思いを残しているのに、言えるわけがない。
私の事も、愛してくれているとも思えないから。
夏基には隠したまま、この赤ちゃんを産んで育てるつもりだ。
黙ったまま俯く私に向けられた木原先生の視線は、決して甘いものではないけれど。
「色々な事情はあるだろうけど、悩みは少ないほうが赤ちゃんのためよ」
そう言って優しく笑ってくれた。
できる事ならば。
夏基と二人で赤ちゃんが産まれてくる事を喜んで、赤ちゃんに会える日を幸せな気持ちで待ちたい。
何の不安も寂しさもなく、産んであげたい。
夏基……。