焦れ恋オフィス

俺に抱かれて、俺の腕の中で乱れる芽依は、まるで俺が唯一の恋人だとでもいうように身体を寄せて、どんなキスにも応えてくれる。

『夏基……』

意識とは無縁の感覚の中呟く芽依の言葉に、俺は何度もすがろうとした。

その吐息の中に、俺への愛情を探す自分に苦笑しながら、それでもいつかは、俺だけの芽依になるんじゃないかと望みを繋いでの日々。

そして、俺自身を芽依に刻みつける長い夜が何度も続いて、一緒に過ごす時間があまりにも自然に感じられるようになった頃。

既にうまくいってなかった彼女に他に好きな男ができて別れた。

お互い、寄り添いたい気持ちは消えて、ただその事を認めたくないのか面倒なのか、口にしないままに続けていた関係を解消して、ほっとした。

そんな自分が冷たいと、自己嫌悪もあったけれど、それ以上の解放感に肩の荷が下りたようだった。

一人になって、心のどこかにあった『浮気』という罪悪感を完全に捨てた俺は、更に芽依に対する想いを強くした。
< 27 / 312 >

この作品をシェア

pagetop