言霊師
それは本心だった。

ヒョウリが言霊師になったなんて事は、ムメにとってはどうでもいい。

気に食わないのは、一言主がヒョウリの“名前”を口にした事。

ムメの祖父も驚いていた。
一言主が名を呼ぶという事がどんな意味を持つのか、よくわかっていたから。


「あなたの、何が特別だっていうのよ…。
―――私はずっと、あの方の為に動いてきた。
本当に、役に立ちたいと…そう思って生きてきたの!
ッそれでも…!」


ムメが口を噤んだのでその先の言葉は音とはならなかったが、言霊は生まれていた。


“一度だって、名前を呼ばれた事なんてなかった”


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