言霊師
けれど、一言主は知っていた。ヒョウリ程ではないが、ムメも言霊に愛されている。

ムメは、兄が死んだ時から言霊を愛するのをやめた。言霊師を消す為の手段、と考えるようにしてきた。

だから、言霊を遠ざけるようになった。それに準じて、言霊もムメを恐れ、近寄らなくなった。…と、彼女は思っている。


(…恐らく、気付いていないのだろうな。)


ヒョウリに、先刻言霊を消した事を改めて非難され反論しているムメを見ながら、一言主は溜め息をついた。


ただ、遠巻きに見ている。


それが、ムメに対する言霊達の見守り方だった。


そして、一言主がムメを見守る方法でもあった。
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