人魚の涙 ~マーメイ・ドロップ~
「………わぁ、僕の家に日が当たらなくなりますね」

「あ、本当だ!うっかりしてたわ、ごめんなさい………その代わり、いつでも私の家に来ていいから許して?」

「本当?嬉しいな~………じゃないですよ!なんで!?今日学校に来るまでなかったし………大体こんな立派な建物、どうやって―――?」

「それは―――」

「………それは?」








僕は喉を鳴らす。
口の中がからからに渇いてくる。








「―――乙女の秘密、よ」

「………」








僕はがっくりとうなだれた。
人魚というのは、どうやら僕達が思っている以上に不思議な力を持つらしい。

深く詮索しても何も情報を得られそうにはなかったから、僕はひとまずは疑問に思う僕の心を、胸の奥に追いやった。








「………じゃあ取り敢えず、美姫さんは今日からお隣りさん、になるの?」








ええ、と言うなり彼女は楽しげに微笑みながら頷いた。








「これからは、毎日にでも会えるわね」








彼女があまりにも嬉しそうにそう言うから、僕は照れ隠しに頭を掻いた。








「べ、別に学校で会えたと思うよ、毎日………」

「ううん、そう言うことじゃないの」








彼女は僕に近づく。一歩、一歩、また一歩。

僕と彼女の距離が三十センチくらいの所で、彼女は歩くのをやめた。潮の香りを乗せ、風が吹いた。








「―――あなたと、少しでも長く、近くにいられる、ってこと」

「美姫、さん………」








僕は喜びと共に、小さな疑念の心を抱いた。

―――彼女は、ホントに僕の事を思ってくれているのだろうか。
信じたいけれど、僕のような凡人に、こんな美少女が、こんな事を言うだろうかと考えると、どうしても疑わしくなる。
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